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BEKUWA 55号 2015 SPRING 日本のノコギリクワガタ大特集 より抜粋引用


番外編 格好良いノコギリクワガタを羽化させたい!

前蛹から羽化まで

変態期に幼虫時の貯蔵栄養を使って成虫の体を作ります。大あごや頭部や胸部などの成虫の各部位は前蛹期に急成長します。適度な低温管理でストレスなく前蛹の期間を延長することが,成虫の体格や大あごを大きくする重要なポイントです。
蛹化時は腹部のポンプ運動により頭部へ繰り返した胃液を送り込み,成虫の鋳型となる蛹の表皮を風船のように膨らませます。高温下では蛹化時のポンピングが活発になって上半身が大きく膨らみ,頭部や大あごの発達した美形の蛹になります。一方,低温化では運動性が低下し,表皮の拡張が足りずに下半身の太りの不格好な蛹になります。
前蛹期には低温管理,蛹化時・蛹期は高温管理で成虫のサイズや体型を改善できます。

本種の大あごの発現は幼虫期の栄養条件と前蛹期の温度条件で決まり,大歯♂を育てるには大型前蛹の低温管理が必要です。大歯型の大あごが湾曲するのは,湾曲部位の内側と外側で細胞の形や増殖スピードに差があるためと考えられます。前蛹期の温度が低いほど大あご成虫原基の成長期間が延長されて細胞増殖が盛んに起こるため,湾曲部位の内外の形態差が強調され,大あごの湾曲が強くなると考えられます。この時期が高温になると,細胞増殖の期間が短縮されて内外の形態差が小さくなり,まっすぐに伸びる形状の大あごになるはずです。

ギネスを狙うには

「神は細部に宿る」という言葉があります。私はその言葉通り,ノコギリクワガタのブリードでも「細かなディテールを疎かにしては全体の美しさや品格のある個体は生まれない」と思います。究極の美形個体を追求するのであれば,誰もができる基本的なことを,誰よりも真剣にやるという姿勢こそが重要です。精緻でファジーな生命現象の謎解きのスリルを皆さんもじっくり味わってみませんか。

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